先回は、報告をする社員を、キチンと評価する大切さについて、ケーススタディーから考えました。今回は、トヨタ自動車ケンタッキー工場のエピソードから。現在のトヨタ自動車会長・張 富士夫氏(当時、ケンタッキー工場の工場長)の話。
「アメリカ人のワーカーは、(不良や不具合が見つかると)ラインを止めろといっても、なかなかラインを止めない。自分の責任につながるようなことは、できるだけ避けようとする。
また、悪い報告を先にするようにも命じたが、それも積極的にやらない。
そこで、研修会のときに、ワーカーに聞いたんだ。"あなた方は、悪い情報をなぜすぐに伝えないのか?とね。そうすると、ワーカーたちが言うには、アメリカでは、ラインを止めたり、悪い情報を伝えたりすると、咎められたり、最悪のケース、クビになる、と言うんだ。
それを聞いて、"よしわかった。これからは、悪い情報をいち早く報告したり、ラインを止めたら、褒めよう。 バットニュースファースト・プレイズファーストでいこう、"と。
それから、「今日は、報告が早いね。」とか「君、ラインの止め方がうまいじゃない。」など、とにかく褒めるようにした。しかし、もちろん、それに加えて、"じゃ、君はどうしようと思っている?"と相手に考えさせることも忘れなかったけどね。
日本人は、問題の全貌を暴こうと、ついつい追及をしてしまうが、これはアメリカ人には向いていない。まずは、褒めることだ。」
このエピソードは、アジアでも十分に通用すると思います。実際、私の研修会でも、以前は、結構、受講者には厳しい研修の進め方をしていましたが、受講者の現地スタッフが黙って聞いてはいるものの、本人たちの質問や意見があまり引き出せませんでした。そこで、受講者との距離を縮めるよう、ユーモアを増やし、自分から受講者に近つく姿勢をみせる工夫するようになりました。そうすると、受講者からの率直な意見が、以前に比べると、引き出せるようになりました。
現地社員は、よく "HE IS FRIENDLY"とか、"NOT FREINDLY"という言い方で、人物の評価をします。このような表現を聞くと、日本人は、「仕事で、しかも上司が何で、FRIENDLYにならなきゃいけないんだ。」と思いがちです。しかし、現地社員は、日本人に比べると、ストレスを極度に嫌いますので、あまり追求をすると、ストレスを乗り越えるという姿勢を見せるより、ストレスを避ける方法(退職など)をとり、結果的に、本来の目的とする結果が得られません。
ちなみに、2年前に、このケンタッキー工場を訪問した私の友人が、工場見学の際、案内をしてくれたアメリカ人ワーカーに、「僕はここでラインをとめたんですよ。僕に兄さんも、ラインを止めたことがあるなぁ。」と誇らしげに語ったそうです。
バッドニュースファースト・プレーズファーストは、いまやケンタッキー工場の文化になっているようです。
《執筆者》
シンガポールPHP研究所
支配人
湯浅 忠雄
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